ジョードプル 8月5日〜16日
ヴィバッサナ瞑想というものをインドのジョードプルで12日間してきた。終わったその日にツイートしたものをまとめたものがあるが、そこの文章を使いつつ、もう一度まとめてみることにする。ブログにまとめ切れなかった断片的なものも多いので、お時間があれば是非見てほしい。
Togetter:世界一周してる大学生が12日間、人と話してはいけない、目も合わせてはいけない、読み書きや娯楽が一切禁止のヴィパッサナ瞑想修行(インド)に参加してきました。
僕が受講したコースは、8月5日から8月16日までの12日間のコース。初日と最後の12日目は会話をすることができ、2日目と11日目までの10日間が本格的な修行の期間となる。コースの受講はインターネットで申込むようになっていて、僕は2週間前にインドのラダックのレーにて、ヴィバッサナのHPから申し込んだ。ヴィバッサナ瞑想の発祥地であるインドでは各地に瞑想センターがあり、日本にも京都と千葉に二つある。ヴィバッサナは寄付で成り立っており、受講者がコース終了後に支払う。
そもそもヴィバッサナ瞑想とは何か。「ものごとをありのままに見る」という意味のヴィパッサナーは、インドの最も古い瞑想法のひとつ。この瞑想法は2500年以上も昔、インドで、人間すべてに共通する病のための普遍的な治療法、すなわち「生きる技」として指導されました。」だそうです。ヴィパッサナHPから引用
瞑想の10日間は一切のコミュニケーションが禁止される。つまり、言葉を発することも、目を合わせることも、ジェスチャーで意思を伝えることもできない。また、読み書きや娯楽も禁止され、当然ながらインターネットなどというものはない。携帯やパスポート、お金を受講前にセンターに預けなければいけない。期間中は敷地から出ることができない。その社会から完全に隔絶された空間で10日間、1日10時間瞑想をする。
瞑想は目を閉じる・坐禅・背筋を伸ばす・鼻呼吸で行う。1時間ごとに5分の休憩があり、1時間のうち最初と最後にテープ音声による講義が流れる。
下記が10日間の1日のスケジュールである。
4:30~6:30 瞑想
6:30~8:00 朝食休憩
8:00~11:00 瞑想
11:00~13:00 昼食休憩
13:00~17:00 瞑想
17:00~18:00 夕食
18:00~19:00 瞑想
19:00~20:30 講義
20:30~21:00 瞑想
21:00~ 就寝
食事はベジタリアンで、卵もない。一日三食で、自分が食べたい分だけよそって食べる。使った食器は自分で洗う。ご飯は各地域によって異なるらしく、ジョードプルでは毎日インド料理が出てきた。京都だと玄米がとても美味しいらしい。
上記ではヴィバッサナの概要を書いたが、下記からは10日間で感じたことを日毎に分けて書いていく。もし上記概要を読んで、興味を持った人がいたら読まない方がいいかもしれない。英語での講義だったため、正しくないことも書いてしまうかもしれないし、感覚的なことも書いてあるので、本当にやりたい人にとっては先入観になってしまうと思う。
▲一人一部屋与えられた。
1日目
4時にヴィバッサナセンターに着く。スペイン人のレイモンと「明日から10日間話せないんだよな、ははは」と笑いあった。参加者は6人で、スペイン人一人、フランス人一人、日本人の僕が一人、残り三人はインド人だった。ジョードプルの瞑想センターのまわりは何も無い。道路があって、たまに車やバイクが通る程度で街の喧騒などは一切無い。とんでもない場所に来てしまったなと心の中で笑った。夜5時に夕食になり、少しゆっくりした後7時に生徒全員マネージャーに呼び出され、ガイダンスを聞いた。ガイダンスの後、1時間の坐禅瞑想をした後その日は終わった。「ああ、修行が始まったんだな」と心の中で思った。
2日目
朝鐘の音と共に目が覚めて、10日間の瞑想修行が本格的に始まった。4時半に起き、2時間の瞑想を終えてみた朝日はとてもきれいで、その朝日を見ながらのチャイは最高だった。瞑想中は坐禅を行い、姿勢をピンと伸ばす。普段猫背の自分にとっては、辛いかと思ったがそうでもなかった。背筋を伸ばすのも悪くないなと思った。講義はすべて英語なのでなかなか大変だったが、おおよその意味はとれた。「Just observe objectively.」その日の後半の瞑想中今までにない感覚に襲われたが、うまく言葉にできない。生徒同士がすれ違うときに言葉はない。目も合わせられないため、顔も見ない。ノーコミュニケーション。ただ相手の空気を感じながら歩く。夜は思考が活性化されて2時間程度眠ることができなかった。
3日目
鼻の中心の呼吸を観察しろ、僕がこのひ言われたのはこれだけだ。昨日の不思議な感覚が長く続くようになっていた。胸の奥から、勢い良く何か流れだす感覚。気持ちの悪いものではなく、むしろ心地良い。
4日目
背筋を伸ばせ、目を閉じろ、鼻呼吸をしろ、体を動かすな。そう言われた。足や腰が少し辛くなってきた、集中してあの感覚が来たとき、その痛みは感じなくなる。
5日目
この頃にはトイレに行く時間も全く同じになった。1時間が、2時間にも3時間にも感じられるようになる。よくある、つまらないアルバイトをしていて、時計を見たら5分しかたっていないあれに近いが、それば惰性的なものではなく、その1分1分が自分の頭の中で凝縮されていた。思考も飛躍して、面白いこともガンガン思いつくし、やりたいこともどんどん増えていく。情報と情報が掛け算でぶっ飛ぶ感覚。思考も面白いように言語化される。
6日目〜8日目
疲労のピークが来はじめた。前日までは1時間坐禅を組んでることは容易かったのに、このころには1時間集中するというのも辛かった。頭から足の爪先までの流れを感じるようにと言われ、徐々に体の芯の部分の流れはつかめるようになった。
9日目
瞑想の感覚が劇的に変わった。坐禅を組み、呼吸に集中しただけで、その感覚に移行できるようになった。夜の最後の瞑想中、一瞬自分が今どこにいるのかさえ分からなくなる。
10日目
終了一日前だったが、最終日だと思って取り組んだ。なるべく体は動かさないようにし、自分の呼吸と体の流れに集中した。
11日目
11日目の午後にヴィバッサナ10日間コースが終わった。終わった後、うまく話せるかどうか心配になったが、そんなことはなかった。終わった生徒たちは、解放感のせいかとてもいい顔をしていた。僕も気持ちの悪いくらい笑顔だった。瞑想のことから、何から何まで話した。10日間、同じように生活をし、同じ異体験をした後のせいだろうか、すぐに仲良くなることができた。当たり前のことをいうようだけど、僕たちは10日間も一緒にいたのに、お互いのことをなんにも知らなかったのだ。知らないからこそ、お互いのことを知りたかった。
12日目
朝4時半に目覚め、1時間の講義DVDを見た後、1時間瞑想をした。このセンターでする最後の瞑想だ。僕は全神経を瞑想に向けた。全身の流れが感じられた。心地良さも今まで以上のもので、最後に相応しいものだった。瞑想が終わった後、マネージャーの人が「7時になったら君たちは自由だ」と言った。その言葉を聞いて僕はどこか寂しさを感じた。マネージャーもどこか寂しそうだった。その日の9時ぐらいにジョードプルのヴィバッサナセンターを僕らは去った。
▲なにもないです。たまに車が通るくらい。
▲この道を歯を磨きながら行ったりきたりしてた。
▲この子とも瞑想中は話すことも、目も合わすこともできない。もちろん犬とも。
▲終わった後の写真。
▲Present for you
▲I present TSUMUGI BAND for them.
▲解放感に満ちていた。
▲最後の集合写真。僕が撮った写真じゃなくて、ちょっとずれているけどとても好きな写真。
ヴィバッサナを終え、2週間がたって思うこと。
いい武器が手に入った、この瞑想の感想を一言で言えと言われれば、僕はこう答える。はっきり言って半月は僕のこの短い旅にとって、とても貴重なものだ。一カ国は十分に楽しめる期間である。しかし、僕はどうしてもこの瞑想をしてみたかった。コミュニケーションも娯楽も一切無い、社会から隔絶された空間で自己を見つめ、心を無にするヴィバッサナを知った瞬間にやってみたいと思った。
自分自身の人生を振り返る絶好の場だと思ったし、自分の今後の人生を考えるとてもいい機会だと直感的に感じた。なにより、この世界に触れてみたいと思った。正直言って、瞑想中は精神的にも身体的にも辛かった。しかし、内容や得たものは期待以上のものだった。旅は非日常を感じる絶好の機会だが、このヴィバッサナ瞑想は非日常以上のものを感じる機会だと本気で思う。
「人間は高度に社会化されて生きているので、一定時間人間関係と外部刺激を遮断した状態に置かないと、生身の自分は認識できないと思う。」親しい友人がこんなことをつぶやいていた。僕もそう思う。僕たちは生活している中で否が応にも新しい情報に触れ、取り込んでいる。それは、人からや本、インターネットからもそうだし、ふと街を歩いているだけでも無意識のうちに色んな情報と接している。それらを遮断すると普段気づかない、意識しないことにも意識が向くようになる。そうやって一度自分を0の自分から振り返ることはとても大切な行為だと、この瞑想を通して感じた。
とにかくも素晴らしい体験で、僕はこれを多くの人に、楽じゃないよ、の一言を添えて薦めたいと思う。僕は日常的にも瞑想は続けていくつもりだ。また、5年後や10年後、どこかの節目にまたヴィバッサナ瞑想のコースに飛び込みたい。
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